I-OPEN PROJECT

食べること、
は生きること。
健康な身体を作る、
働く人のための玄米食。
I-OPENER’S STORY
大塚 三紀子
株式会社実身美 代表取締役
大塚三紀子さんのプロフィール画像

I-OPENER’S STORY #05

玄米の効能を生かして、現代人の健康を支える

健康的な生活を送るためには、バランスの取れた食事が大切。そうわかってはいても、忙しい日々の中で実践するのは難しいものです。では、身体のことをよく考えたメニューを日替わりで出してくれる定食屋さんがあったら? 実身美(さんみ)は、そんな発想から始まったカフェであり、食堂です。創業からもうすぐ20年。現在は大阪に3店、東京と沖縄に1店ずつの5店舗を展開。東京のビジネス街の中心にある大手町の店舗は、ランチタイムや夕食時には行列ができる人気店になりました。代表の大塚さんは、現状にとどまらず次の飛躍を目指して、特許庁I-OPENプロジェクトのメンタリングプログラムに参加。20年にわたる挑戦と、これからのチャレンジを聞きました。

家族に食べさせたいのは、健康になれるご飯

Q. 実身美で提供している食事と、その特徴について教えてください。

大塚:私たちのコンセプトは、「家族のために作るご飯」。それを外食産業の仕組みの中で提供することです。家族のためのご飯とは、真心を込めて、食べる人の健康を考えて作るご飯のこと。例えば、脂質と糖質をたっぷりと含んだ料理は、一口食べて「おいしい」と感じやすいものですが、毎日食べ続ければ身体にとって負担になります。喜んでくれるからといって、食べ続けると生活習慣病になるリスクが高まるようなメニューを、毎日食卓に並べたくはないですよね。私たちは、お客さまに対しても同じように考えています。ここに来れば、しっかり栄養が取れて、健康になれるという店にしたい。飽きないように毎日献立を変え、使う食材は、有機農法で育てた野菜や国産野菜を使って、あたたかいご飯を用意してお客さまを待っています。

鶏もも肉とお野菜のクリームシチューの写真ある日の日替わり定食「鶏もも肉とお野菜のクリームシチュー」。豆乳で作ったあっさりとしたクリームシチュー、高野豆腐のフライなど、満足感はありながら栄養価を丁寧に考えられたメニュー構成。これが税込1,100円とは驚き

Q. 「実身美」の名前にはどんな意味が込められているのでしょうか?

大塚:「み」と読む漢字が、大事にしている順に三つ、並んでいます。まずは、野菜や果物の「実」であり、物事の本質を表す「実」。そして、身体にいいものであることの「身」。最後に、美しいや美味しいの「美」。三という数字には不思議な縁を感じていて、私の名前にも「三」が入りますし、それは曽祖父から受け継いだ名前でもあります。この三つを、常に大事にしようという想いで名付けました。

実があって 身体によくて 美しい

大塚:食べる喜びがあるだけでなく、食べることと健康に関する知識も自然に身に付くような店にしたいと思っています。例えば、うちのお店では、お水の横に白湯も常に置いてあります。白湯は、身体を温め内臓機能を活発化させ、代謝が上がることでデトックス効果もあるんです。もちろん、季節の食材を食べること自体が、身体の老廃物を外に出すことにもなります。そして、特にこだわっているのが玄米。柔らかめに炊いて、食べやすいかたちで提供しています。店内には、これらの説明書きも掲示して、メニューに込めた意味を伝えるようにしています。

店内の写真

若さと想いで駆け抜けた創業期

Q. 創業のきっかけと、現在に至るまでの経緯を教えてください。

大塚:私は大阪の大学を卒業し、そのまま大阪でOLをしていたのですが、ハードワークで身体を壊してしまいました。今より20年以上も前の話で、当時はスーパーマーケットも20時で閉まり、仕事帰りに女性が一人で入れるようなお店はほとんどなかったんです。小さい頃から身体が強い方ではなく、喘息やアトピーもあったため、母は健康にいい食事を毎日作ってくれていたのですが、実家を出てから、やはり食生活が乱れてしまいました。このままではまずいと思っていた頃、ホテルのシェフをしながら、もっと健康的な料理を提供したいと考えていた友人と再会し、意気投合。「自分たちが仕事終わりに毎日寄りたくなるような店を、自分たちで作ろう」。そう思い立って、飲食店経験はまったくないにもかかわらず、創業準備を始めました。そして2002年に、親戚が以前薬局をしていた7坪のスペースを借りて、「実身美」の一号店を大阪・阿倍野にオープンさせました。

店内の写真自然素材で統一された大手町店の店内。ナチュラルであたたかい雰囲気は、一号店から変わらず受け継いでいるものだとか。テーブルはすべて無垢材、イスはビンテージのチャーチチェアを採用し、使い込んでいくことでさらに風合い良く、なじんでいく

大塚:最初の1〜2年は、お客さまも少なく細々と経営していたのですが、働く女性が増えてきたこともあり、徐々に軌道に乗ってきました。ただ、私たちは当時まだ20代で若かったせいもあり、ビジネスとして戦略立てた経営を意識できていませんでした。注目を浴びるようになると、メニューを真似されるようになり、ひどい時はバイトで入った人が数ヶ月でやめ、その後にメニューから食器までそっくりのお店を出店されたこともありました。私たちの本来の目的は、皆さんに健康な食事を提供することですから、身体にいい食事を出す店が増えるのは良いことではありますが、盗まれるようなやり方は、嬉しくはありませんね。そんなこともあり、私たち独自の価値をちゃんと考えて作り上げる必要があると、長らく思ってきました。そして今回、きっかけをいただき、特許庁I-OPENプロジェクトのメンタリングプログラムを受けさせていただくことになったのです。

有機栽培たまねぎの写真土が残った有機栽培のたまねぎ。野菜ごとに仕入れ先は異なるが、信頼できる農家さんとパートナーシップを築いている。中身の60%以上が生の有機たまねぎで、化学調味料も保存料も一切使わずに商品化した「酵素ドレッシング」は、実身美を代表する人気商品

玄米が、プチアディ™(依存性)を抑制する

Q. メンタリングの中で見えてきたものは何でしょうか?

大塚:私にとって、メンタリングプログラムはまさに、Eye-Open(目を開かされる)でした。知財やソーシャルデザインを専門とする先生方からアドバイスいただき、これまでの活動や強みを整理できました。そして、メンターの方々と一緒に新たな事業アイデアを考えていく中で、ひとつ、形が見えてきました。それは、私たちが創業当初よりずっとこだわってきた、玄米に関するものです。

玄米の写真実身美の玄米は、広島の契約農家で作られたもの。専用の圧力鍋を使って、ふっくらと炊き上げる。そこに、天然のにがり塩と黒ごまを丹念に炒ったごま塩をかけて提供。玄米では補えないカルシウムをごま塩で補給し、お茶碗一杯の完全食になる

大塚:実身美の沖縄店に来店いただいた琉球大学医学部のお客さまが、玄米についてより深めたいならと、同大学の益崎裕章教授を紹介してくださいました。益崎教授はメタボリックシンドロームという言葉を世界で初めて広めた、著名な先生。その後は琉球大で玄米の健康効果を研究をされていて、2017年より私たちとも共同研究をして頂けることになりました。米は白米の約7倍の栄養素を持ち、食物繊維やビタミン、ミネラルが豊富。さらに最近の研究で、玄米に含まれるガンマオリザノールは脳の報酬系依存を抑制する働きがあることが実証されたのです。

大塚さんとの対談風景

大塚:例えば、チョコレートやポテトチップスを食べ始めて、止まらなくなった経験はありませんか? 原因はストレスなどさまざまですが、一度その味を知ってしまうと、脳が強烈に欲しがってしまう。身体はもっと自然なものを欲しがっているのに、止まらずに食べてしまう。この状態を、報酬系依存と言います。私たちはそれを、「プチアディ™(プチ・アディクション)」と名づけ、商標出願しました。そして、プチアディを抑制する働きがある玄米を使って、依存を減らしていくためのプログラムを現在開発中です。これは膨大な時間をかけ、臨床試験を繰り返し、お金も時間も費やして見つけたひとつの答えですから、大切にしていきたい。知財は、私たちの活動を広げていくときに、その軸になり、守ってくれるものになるのだと改めて学ぶことができました。

食に関わる人の地位を上げるために

Q. 今後の目標について、聞かせてください。

大塚:私たちはもともと、「お金儲け」をするためにこの事業を始めたわけではありません。身体にいい食事を、多くの人に食べていただき、健康になっていただくことが目的であり、それは今も変わっていません。しかし、食事は毎日のことですから、毎日食べられるような場所にあって、家計への負担も少ない価格で、かつ毎日飽きないものを提供し続ける必要がありました。このバランスを追求していくことはとても難しいことでしたが、働いてくれるスタッフやお客さま、様々な方の支えもあって、ようやくここまで来ることができました。

店内の写真家族のために作るご飯とは、愛情を込めて、手間をかけて作るご飯でもある。食材を作る農家さんや、それを上手に調理する実身美のスタッフさんたちがいるおかげで、私たちはお金を支払うだけで、簡単に美味しい食事を味わうことができる。大塚さんも、スタッフにはいつも感謝していると繰り返し語っていた

大塚:しかし、飲食業界はまだまだ課題が多いとも感じます。食事を通じて健康な身体づくりをサポートすることは、本来とても社会的な価値が高いこと。にもかかわらず、飲食業は体力的にきつく、給与など労働条件も決して良いとは言えません。私自身も、いつも働いて現場を支えてくれるスタッフに、もっと対価を支払えるようになりたいと思っています。そのために、もっと食に関わる人の地位を上げていき、社会で認知してもらえるようにしたい。今回のメンタリングと知財化は、その大きな一歩です。店舗運営とはまた違ったかたちで、玄米や健康に良い食事を広める活動を続けていけるよう、20年目を迎える今年、決意を新たにしています。

大塚 三紀子(おおつか・みきこ)
株式会社実身美
代表取締役

関西大学法学部を卒業後、税理士事務所やベンチャー企業に勤務し、2002年12月に大阪市阿倍野区にて玄米カフェ「実身美(サンミ)」をオープン。2006年6月に、株式会社Mijoa(のちに株式会社実身美と商号変更)を設立し、代表取締役に就任。2022年3月現在、東京・大阪・沖縄に5店舗を経営している。ピークタイムには行列ができ、酵素ドレッシングなどの商品は女優やモデル、美容家などにも人気。ドラッカー学会会員で、経営学から料理、栄養に関することまで、常に学びを欠かさない。著書に、「実身美のごはん」「実身美の養生ごはん」(ともにワニブックス)がある。

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